生きるって大変なこと。すごいこと。

32歳で大腸がんになった私の、それでも生きる、海外奮闘記

人生初の、男と家を一緒に捨てた日

自分で選んで決めたのに、こんなに辛い日はなかったというくらい久々に泣いた。ありえないほどの快晴の朝、大好きな家を出ていかなければならなかった。

誰に追い出されたわけでもない。でも決めたのだ、幸せになるって。幸せが何かはわかっていないけれど、今が幸せでないのはわかる。ここに住んでいる限り、彼とは離れられない。だから大好きな人たちのいる大好きなこの家を、勇気を出して出ていかなければと。

ただ、朝から涙が止まらなかった。いつものように彼と同じベッドで目覚めおはようのハグをして、シャワーを浴びてビジネス服に着替える彼を見ながら、ただ違うのは、全部がこれで最後だということだ。平気だと思っていたのに自然と涙が出てきて、でも"I'm not crying(泣いてないもん)"と嘯いてみる。"Are you okay?"と抱きしめられても、心配なんかしてほしくない。これからはもうこのハグも遠いものになるのだ、泣きたいときには一人で泣くことになるのだ。彼だけでなく他のルームメイトにも別れを告げて、なんでこんな悲しいのに出ていくんだろうと自分でもよくわけがわからなくなる。ルームメイトのカナダ人が入れてくれた最後のコーヒーを飲みながら、愛おしむように景色を目に焼き付けた。


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大好きだったけど、優しかったけど、なんだかんだで自分のことが一番好きな人だった。私のことをどこまでも大切にって感じではなかったし、結局病気のことも打ち明けられなかった。大事なことが話せない人とは、ずっと一緒にはいられない。一年前から、長く続かないことはわかってた。だけど、ふられたわけでもなく喧嘩したわけでもないのに離れるって、けっこう辛い。

 

引っ越しの前の夜は二人で最後の食事をして、食べ過ぎで二人共苦しくなってろくに話もせずに寝てしまった。いつも夜中くっついて寝るのに食べ過ぎで体温が高すぎてお互い離れて寝て、なんて失敗なラストナイトなんだろう。

 

さようなら。

せっかく生き延びた人生を、死んだように生きるわけにはいかないから。もっと笑って暮らせるように、私はあなたから離れます。さようなら。